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とらわれた夕陽のはなし  05/12/6 [ことのは]

ちいさな王子は言いました。

「あの夕陽がほしい」

 

 

家来たちは夕陽をつかまえ、ろうやにとじこめてしまいました。

夕陽はほんとうはみんなを照らしていたかったのだけど、しかたがありません。

それでも夕陽はしあわせでした。

王子がすきだから。

 

  

 

 

 

     *     *     *     *     *

 

王子はおとなになり、となりの国のお姫様に恋をしました。

お姫様は王子と結婚してお妃さまとなり、王子は国の王様となりました。

王様は国を良くすることに熱心で、とらえた夕陽のことなどすっかりわすれていました。

それでも夕陽はしあわせでした。

王様は国をたいせつにする心をもつ、やさしいひとだから。

 

      *     *     *     *     *

 

ある日、べつの国にせめこまれ、王様はとらえられてしまいました。

そして、とらわれた夕陽のいるろうやにとじこめられてしまいました。

それでも夕陽はしあわせでした。

王様とずっといっしょにいられるから。

 

      *     *     *     *     *

 

王様はそのまま、びょうきにかかり、なくなってしまいました。

人びとはかなしくなって、泣きました。

夕陽もかなしくなって、泣きました。

家来たちはかわいそうな夕陽をろうやの外に放してあげました。

夕陽は何十年ぶりに外に出られ、しあわせなはずでした。

 

      *     *     *     *     *

 

せっかく外に出られることになったのに、かなしみにくれた夕陽は、一日のはんぶんを昔とらえられていたろうやですごすことにしました。

人びとは、夕陽がじぶんたちの上にいないはんぶんのじかんを「よる」と名づけました。

夕陽はとてもしあわせでした。

「よる」には亡くなった王様が夕陽に会いにきてくれたから。

 

 人びとも、「よる」には夢の中で、王様に会うことができました。

人びとも夕陽も、とてもしあわせでした。

 


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コメント 18

honma

Betty-a-sateauさん こんばんは。

 もの・・・がた・り・・・。

 想う気持・・・の強さと、まっすぐな姿勢を感じます。美しいお話ですね。

 まだまだ・・・というか、私が~を想う気持は、無償・・・でありたいのに、代償を求めがちです。

 でも、それを乗り越えた時、「しあわせ」と出会えるのかも知れません。

 あぁ~夕日のように、遠そうです。
 
by honma (2005-12-06 23:12) 

Betty-A-Sateau

honmaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
代償を求めてしまうのは・・・人間だから・・かもしれませんね。
多分、人間は、さみしがりやだと思うから。
夕陽にとっては、ただ、王様がそこにいるだけでよかったのかもしれません。
by Betty-A-Sateau (2005-12-07 09:28) 

素敵な物語ですね。
ちょっとジーンと来ちゃいました。
by (2005-12-07 10:26) 

aloeDog

ほんと、ジーンとしちゃった。
いいお話をありがとう。
by aloeDog (2005-12-07 15:46) 

nobby

こんにちは。初めまして、NOBUです。午後の小休止にコルトレーンの”I Want To Talk About You”を聞きながら、バウムクーヘンとアップルティーをいただいております・・・。貴女は、夕日の化身?この曲のタイトルを”王子様の事を話したくて”に変更しておきます。僕のところにもとっておきの夕焼けがあるので、良かったら、見に来てみません? 《神々のすむ島》に。
by nobby (2005-12-07 16:13) 

dan

この作品は、面白いですね☆
なんか切ない感じが素敵です
昼と夜の物語は結構あるんですが、これは初めて聞きました。
by dan (2005-12-07 16:54) 

nyan

いい話だね。
頭の中で、素敵な想像しながら読めました。
でもやっぱジ~~~ン。
by nyan (2005-12-07 17:06) 

honma

 そこにいるだけで・・・いい。

 たしかに・・・そうですね。

 でも、それを望んでしまうところが・・・にんげんだもの・・・人間ってつらい!
by honma (2005-12-07 21:50) 

キョーコ

こんばんは。
いいお話ですねえ。。。。夕日の写真をみていると夕日の気持ちが伝わってきそう。
by キョーコ (2005-12-08 00:11) 

Betty-A-Sateau

皆様、コメント&niceありがとうございます。

>みかんさん
ありがとうございます。
偶然おさめた夕陽の写真を眺めながら、なんとなくお話ができました。

>aloeDogさん
こちらこそ、ありがとう、です。とても嬉しいです。

>NOBUさん
はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
 「午後の小休止にコルトレーンの”I Want To Talk About You”を聞きながら、バウムクーヘンとアップルティーをいただいております・・・」
これだけで、もう物語がひとつできあがっているような風景です。いいですね。
コルトレーンは夕陽にとても似合うような気がします。
ぜひ、そちらへお伺いさせていただきますね。

>danさん
昼と夜の物語・・・他にはどんなのがあるのでしょうか。気になります。

>nyanさん
どうもありがとう、です。
はじめは、冒頭の部分(「続きを読む」の手前まで)でこの話は終わりでした。
でも、ハッピーエンドが好きなもんで・・・。

>honmaさん
人間って、つらいものですね・・・。
だから、いろいろ悩んじゃったりさみしくなっちゃったりするんですね。
自分が精一杯がんばった分だけで、いいような気もします。にんげんだもの。

>キョーコさん
夕陽の気持ち・・・ そうですね。ありがとうございます。
子供が読みたくなるようなおとぎ話のつもりで書いていたのですが、できあがったものはちょっぴり違うものになったかもしれません。
by Betty-A-Sateau (2005-12-08 09:36) 

MINX

あぁぁぁいいお話だなぁ。
せつないなぁ。
by MINX (2005-12-08 10:06) 

Betty-A-Sateau

norikoさん、ありがとうございます。
コメントを皆様にいただいてから、このおはなしが、書き上げた時以上に好きになりました。不思議ですね。
by Betty-A-Sateau (2005-12-08 10:17) 

dan

よくは覚えてないんですが、前に民話の研究をしている時にちらっと読んだのが、
月が太陽を追いかけているような話だとか
神様の右目が太陽で、左目が月だとかっていうのもありました。
今度、ちゃんと調べてきますね。 まだ資料は残ってるんで
by dan (2005-12-10 17:39) 

Betty-A-Sateau

danさん、お返事ありがとうございます。
以前に神様の左目の写真をdanさんのブログでお見かけしましたね。
神秘的な話ですね。
その後のご報告、楽しみにお待ちしております!
by Betty-A-Sateau (2005-12-12 09:20) 

dan

太陽と月の神話をひとつ
これは、中国の少数民族に伝えられてる物語らしいんですけど・・・
昔、突然龍が現れ、地上の火と言う火を全部奪っていったそうです。
その後に大きな鷹が現れ、地上の水という水を全部奪っていきました。
人々が水も火も奪われて困っているのを聞き、一組の夫婦が立ち上がり火と水を取り返す旅に出ました。
夫は龍から火を取り戻すために、暖かい方向である東に旅に出、道の途中で倒れている老人を助け、旅の目的を話しました。 老人はそれを聞いて、やめるように勧めたが、それでも行くというので、龍を倒すためには金水湖の水で身体を鍛える必要があると教えました。金水湖で身体を鍛えると身体は金色に光り、龍に勝てたそうです。龍は、鱗をはがされ、それが今の星星になりました。龍を倒した夫は、妻を捜しに西に向かいました。
一方、妻は冷たい方向である、西に向かいました。そこで、道に倒れている老婆を助け、大きな鷹を倒しに行くことを話しました。老婆は、それなら銀水湖で身体を鍛えるといいと教えてくれ、その通りにすると、身体が銀色に光り、大きな鷹に勝てたそうです。戦いで大きな鷹の羽をむしり、これが今の雪の花弁になりました。鷹を倒した妻は、夫を捜しに東に向かいました。
この夫婦のおかげで地上には火と水が戻り、平和になりました。しかし、夫婦はいつまでも行き違いになり、永久に再会することが出来ませんでした。 こうして、夫は日神となり、妻は月神となり、今でもお互いを捜しているそうです。 これが、今の太陽と月の始まりになりました。

文章力がないんで、綺麗にはまとめられないんですがこんな話がありました。 長くてごめんなさい。 最後が「めでたしめでたし」で終らないところが、切なくて印象に残っています。 人の生活はなにかの犠牲の上で成り立っているということも教訓として込められてるんですかね~
この物語を伝承している民族は焼畑農耕を中心に生活をする民族なので、火と水が生活には必要不可欠ということで伝えられているそうです。
by dan (2005-12-14 18:46) 

Betty-A-Sateau

danさん、お話ありがとうございます。
すれ違いのまま・・というのが、せつないですね。
太陽は(男性の)神、月は女神・・というのはイメージとしてもっているのですが(ギリシャ神話の影響でしょうか?)、各国でいろいろな物語があるのですね。
星星は竜の鱗、雪の花弁は鷹の羽・・・・ そう思うと自然を眺めることがまた楽しくなりそうです。
ありがとうございました^^
by Betty-A-Sateau (2005-12-15 09:28) 

dan

太陽は男性神というのは、みなさんが持ってるイメージでは多いみたいですね。 でも、気づいてますか? 日本の太陽神は、天照ですよ~
てことは、日本では太陽は女神なんですよね☆
あ、ちなみに沖縄では、太陽神は男性神としての一面が多いです。
by dan (2005-12-16 15:58) 

Betty-A-Sateau

danさん、引き続きありがとうございます。
どうやら私はまだまだ勉強不足・・・日本では女神でしたか^^
またひとつ、勉強になりました☆
by Betty-A-Sateau (2005-12-16 18:01) 

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